雑居長屋のリサーチ
2016. Mar. 16
東京は雑居ビルの街だとも言えます。商業地域の表通りはデパートやブランドが自社ビルを持ち全フロアを専有していることが多いのですが、裏通りにはフロア貸しの賃貸テナントビルがズラリと並び飲食店や物販店が入っていたり、歓楽街だと居酒屋とかサラ金が入っていて、東京の繁華街はいわゆる雑居ビルで溢れています。これら雑居ビルはほとんどの場合、裏手に共有の階段があって、各階へはその共有階段を通ってアクセスします。共有階段はできるだけ効率よく作られることが多いので、だいたいがクルクルまわる整然とした回り階段で、これが雑居ビルのビジュアル的な特徴にもなっています。 でも、今日は雑居は雑居でも雑居ビルには目もくれず、「雑居長屋」を探して歩きました。とあるプロジェクトのための雑居長屋リサーチです。
ではなぜ雑居長屋なのか。雑居長屋とは私の造語だが、つまり「道路から直接または専用の階段を通って入るお店が複数入居している建物」のこと。そもそも長屋の建築法規上の定義は「2つ以上の住宅を1棟に建て連ねたもので、各住宅が壁を共通にし、それぞれ別々に外部への出入口を有しているもの※」。つまり共有部を持たず各戸の玄関が街と直接接している。それは逆に共有部を持つマンションやアパートと比べ防火や避難などの法律的な縛りが弱い。そして、雑居長屋は高さ方向に積層されることも多く、その場合それぞれの階へ行くための専有の階段を持つことになり、必然的に建築の使われ方と街の関係がダイレクトに表れてくるから面白い。観察したくなる。そこには建築をどう使ってやろうかという空間への野望が見て取れて、飽きない。
それぞれ独特の表情をもつ雑居長屋。その表情を作ってるのはやっぱり階段だ。 今回見つけた特徴的な階段を持つ雑居長屋のほとんどが都市計画上の第一種住居地域に位置していた。雑居長屋が第一種住居地域に生産される見えない仕組みがあるようだ。興味深い。次は用途地域に気を配って、第一種住居地域と雑居長屋について探索してみてみたら、さらに面白い雑居長屋に出会えるかもしれない。
※国土交通省/建築動態統計調査「用語の定義 長屋建」 より